日尾御前山



弥勒菩薩像が彫られているという日尾御前山西側の大岩壁(2008年6月28日撮影)


所在地富山市八尾町
大長谷島地 アプローチ八尾より大長谷川を南下する
登山口標高400m
標   高1054m
標高差単純654m
沿面距離片道2.8Km
登山日2008年6月28日
天 候晴れ後曇り
同行者牧野
コースタイム 登山口(3時間50分)頂上<休憩1時間45分>(2時間15分)登山口
合計7時間5分<休憩1時間45分含む>



谷内谷川に沿った日尾御前山遊歩道をたどり、西側岩壁の下まで行く
 
 八尾町大長谷にある日尾御前山。1年前から高岡ハイキングクラブの牧野さんと温めてきた山だ。
 山の西側の大岩壁に行基菩薩が彫ったと言われる弥勒菩薩像があり、その下の広場で村人が祈りをささげたと言われている。
 その他にも比丘尼屋敷、駒御跡、鏡岩などの伝説があり、標高は1000mそこそこしかないが、ミステリアスな山だ。


谷内谷川左岸にある八幡社
 

ここから国道(471号線)を離れて左へ
 
 大長谷の交流センターで待ち合わせ、7時にスタートする。牧野(以下敬称略)とは初対面。年上である。
 大長谷交流センターから車道(国道471号線)を600m南下してお宮の横の谷内谷川を渡る。渡って20m、左側に(意外に)立派な立て看板がある。


看板が大げさだと思う
 

こんな看板まである
 
 ここを左折して大きく右に曲がったあと、民家の角でまた、左折する。真っ直ぐ行って、藪に入ってしまった。この道はクランクしていて、直角に右に曲がって30mほどでまた直角に左に曲がらないといけなかった。
 遊歩道は谷内谷川の右岸、左岸を行ったり来たりしながら標高を上げていく。紛らわしい分岐の踏み跡もあり、本道でさえ分かりにくいので気をつけないといけない。


右にカーブした道からさらに左に入る
 

道が分かりにくく藪こぎになる
 

♪ クワの実を〜、こかご〜に、摘んだ〜は〜、いつの〜日〜か ♪
 
 標高650m当たりで沢を離れ、右の杉林に入っていく。ヨシナやエラが一面に生えている。エラは旬を過ぎていた。
 標高850m、岩壁下の広場で踏み跡は消えてしまった。木立が邪魔で全容は見えないが大岩壁は目の前だ。ここが祈りを捧げた広場らしい。
 広場と言っても草が生い茂り原型をとどめているにすぎない。


岩室にあった看板類
 

岩壁下の広場の岩の上に立っている杉
 
 大岩壁を右側から巻いてコルに出る。コルから尾根をたどって頂上に立てば最短だ。だが、目的は頂上じゃなく、弥勒菩薩像だ。
 岩壁に向かって藪を漕ぐ。腰の高さまでに育ったエラ(イラクサ)が手に当たって痛痒い。パンツの上から太ももにも刺さる。痛い!
 かすかな踏み跡のようなものを見つけてそれをたどった。踏み跡は人間のものか獣のものか分からない。真っ直ぐ岩壁の谷間に向かっていた。


岩壁に向かって行くも敗退
 
 岩壁の下から上へは狭い土壁となっていた。手がかりは所々に生えているギボウシだけ。かすかに露出している岩を足がかりに少し登ってみた。
 この土壁を登り切って岩壁の下に出た後が不明だ。行き過ぎて戻れなくなると危険だ。ザイルを持ってきていない。
 実際5mほどしか登っていないのに戻るのに一苦労した。


尾根の途中にあった周囲15mぐらいありそうな巨大な杉の木
 
 弥勒菩薩像は見えない。こんな礫岩では掘ってあるとしたらかなり大きな物のはずだ。行基菩薩が掘ったと言うのも怪しい。探すのを諦める。
 岩壁の下を右にトラバースしてコルに出る。コルから頂上への稜線に踏み跡があった。これをたどる。
 踏み跡があると言っても幾重にも生えているシャクナゲの枝がうるさい。11時ちょうど、頂上と思われる場所に出た。標識も目印もない。


その杉の木の上に立つ牧野
 

シャクナゲの木の枝が邪魔な藪漕ぎ
 
 空身で少し先まで行ってみる。その先は降っていくだけで何もなかった。頂上の目印は大きな杉の木だ。2人が座れる場所を確保して乾杯。視界はゼロ。


日尾御前山頂上にあった一本の大きな杉の木
 

尾根の途中にあった展望台を横から見る
 
 帰る途中の尾根で展望台を見つける。登りでは気づかなかった場所だ。手前にある松の木が邪魔で見えにくい。
 大人が3人ほど座れそうな棚がある。その先端、両側は50mほどスッパリと切れ落ちている。見晴らしはいいが宴会には向かない。危険すぎる。


この松の木の向こうに展望台がある
 

展望台の上に立つ牧野 腰が引けてない?
 
 展望台の南側に深い切れ込みがあった。ここを登れば近いし、早いし、面白いはず。藪漕ぎもない。いいコースになると思う。
 コルまで戻って盆地状の沢に降りる。右に大岩壁を見ながら午前中に通った広場に戻る。沢を降り、民家まで戻った。


岩壁の割れ目を上から覗く
 
 廃屋だと思っていた民家の裏でおばあさんが畑仕事をしていた。弥勒菩薩像の事を聞いてみようと声をかける。
 彼女の話では、弥勒菩薩像は彫られた物じゃなく自然の岩がそう見えたとのこと。それもよく見ているとそんな気がしてくるという程度の物だった。
 がっかりした気持ちと、ほっとした安堵感が心の中に共存している。

 息子を戦争で亡くしたという親が岩壁の下で叩く太鼓の音をよく聞いた。その太鼓の音もいつしか聞こえなくなって久しいと言う。
 子の死を悼む親心を物語るエピソードをこんな山の中で聞かされるとは思っていなかった。しばらく言葉を失う。


盆地状の広場の杉の木
 
 7月15日に下草刈りが入るから、その後に来ればよかったのにと言う。下草刈りが入っても岩壁の下の広場までだ。その先は藪こぎしかない。
 日尾御前山は三角点があるわけでもなければ「越中の百山」に選ばれている山でもない。訪れる人が少ないのはしょうがない。


広場を後に自然林の中を降る
 

 日尾とは日向の反対語で朝日の当たらない西側を言う。また御前山とは前衛峰の意味があり、その山に登れば本峰に登ったのと同じ御利益あると言われている。
 ちなみに日尾御前は金剛堂山の前衛峰であり小佐波御前は立山の前衛峰である。


キツネノボタン?
 

ウリノキ
(岩月さんありがとう)

ハナイカダの実
 

サンカヨウの実
 

ミヤママンネングサ
(ネノマンネングサ?)

ヘビイチゴの実
 

エゾアジサイ
(ヤマアジサイ?)

クルマバナ
(ニガクサ?)

ヤマボウシ
 

 上段中央はピンボケです。1〜2mの樹木で、細長い花が開くと外側に丸まって人魚のようになる可愛い花でした。花の丈は約3cm。葉は五葉に切れています。
 中段中央は礫岩の上に咲いていて、小佐波御前山の獅子ケ鼻でも見ました。やはり礫岩の上に咲いていました。
 ヘビイチゴは子供の頃、毒イチゴだと聞かされていましたが図鑑では毒とは書いてありません。単に美味しくないだけなのでしょうか?
 ヤマボウシの実もよく採って食べました。呼び方は忘れてしまいましたがヤマボウシではありませんでした。